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2021年に登場した「Raspberry Pi Pico」は、わずか数百円という衝撃的な低価格と、自社開発チップ「RP2040」の高性能(デュアルコア・プログラマブルI/O)によって、世界中のメイカーや電子工作ファン、そして産業用組み込みエンジニアを熱狂させました。
そして2024年秋、満を持して登場した待望の第2世代が「Raspberry Pi Pico 2」です。心臓部となる新チップ「RP2350」は、単なるクロックアップやメモリ増量にとどまらず、半導体業界の常識を覆す前代未聞のアーキテクチャを引っ提げて現れました。なんと、チップの中に「Arm Cortex-M33コア」2基と、オープンソースの「RISC-V(Hazard3)コア」2基の合計4基のCPUコアが物理的に同居しているのです。なぜラズベリーパイ財団は、これほど大胆なハイブリッド設計に挑んだのでしょうか?
この記事のポイント
- Arm Cortex-M33(FPU/DSP付き)とオープンソースRISC-Vコアの両方を1チップに集積
- SRAM容量が264KBから「520KB(約2倍)」へ大幅増加、動作周波数は150MHzに強化
- TrustZoneや暗号アクセラレータ、ワンタイムプログラマブル(OTP)メモリによる本格セキュリティ
驚愕の「デュアルArm + デュアルRISC-V」ハイブリッド構造
RP2350の最もユニークな特徴は、起動時に「どのCPUコアを使うか」をユーザーが自由に選択できる点です。
チップのシリコンダイ上には、以下の2種類のプロセッサコアがそれぞれデュアルコア(2基ずつ)配置されています。
- Arm Cortex-M33(×2基):DSP命令拡張と単精度浮動小数点演算器(FPU)を備え、業界標準の堅牢なセキュリティ機能「Arm TrustZone」に対応した主力コア。
- Hazard3 RISC-V(×2基):ラズベリーパイ財団のエンジニアLuke Wren氏が独自設計した高効率なオープンソースRISC-V(RV32IMACZicsr_Zba_Zbb_Zbc_Zbs_Zbkb)コア。
ブートローダーの設定によって、「Armコアで動かす」か「RISC-Vコアで動かす」かを切り替えることができます。商用の量産製品で定評のあるArmエコシステムを活用しつつ、ライセンス料不要でオープンな次世代アーキテクチャであるRISC-Vのネイティブ開発・学習環境を、わずか数百円のボード1枚で手に入れられるのです。
RP2350のデュアルコア切り替えやPIOプログラミング、MicroPython・C/C++での制御テクニックを本格的に学びたい方には、豊富なハンズオンコードを収録した Raspberry Pi Pico 2(RP2350)プログラミング実践ハンドブック が最良のガイドとなります。新機能のレジスタ操作が明快に解説されています。
Pico 1(RP2040)からどこが進化したのか?
初代Picoと比較すると、基礎性能のすべてが一段階引き上げられています。
| スペック項目 | 初代 Raspberry Pi Pico(RP2040) | Raspberry Pi Pico 2(RP2350) |
|---|---|---|
| CPUコア構成 | Arm Cortex-M0+(2基) | Cortex-M33(2基) または Hazard3 RISC-V(2基) |
| 動作クロック | 133 MHz | 150 MHz(オーバークロック耐性も向上) |
| 内蔵SRAM容量 | 264 KB | 520 KB(約2倍に倍増!) |
| 浮動小数点演算 | ソフトウェアエミュレーション(遅い) | ハードウェアFPU内蔵(超高速) |
| セキュリティ機能 | なし(ファームウェア平文) | Arm TrustZone、SHA-256、セキュアブート、OTP |
| ピン配置の互換性 | 基準ピン配置 | 完全なピン互換(既存基板にそのまま差し替え可能) |
内蔵SRAMが520KBに倍増したことの恩恵は絶大です。大容量フレームバッファを必要とするカラー液晶ディスプレイの描画や、軽量な機械学習モデル(TinyML)の推論、複雑なネットワークスタックの処理が余裕を持って行えるようになりました。さらにハードウェアFPUが搭載されたことで、三角関数や物理演算、センサーフュージョンの計算速度が十数倍に跳ね上がっています。
新世代の強力なマイコン基板を手に入れて電子工作やIoTプロトタイピングをスタートしたい方は、ピンヘッダー実装済みの Raspberry Pi Pico 2 / RP2350 マイコン開発ボード を手元に用意すれば、ブレッドボードに挿して即座に開発を始められます。
産業用途を見据えた「強固なセキュリティ」
初代RP2040が商業現場で採用される際、最大の懸念点だったのが「セキュリティ」でした。外部Flashメモリから平文でプログラムを読み出す構造だったため、ファームウェアのリバースエンジニアリングやコード改ざんを完全に防ぐことが難しかったのです。
RP2350では、この課題が完璧に解消されました。
- セキュアブート(Secure Boot):暗号化された署名付きバイナリのみを実行可能にし、悪意あるコードの混入を遮断。
- ハードウェアSHA-256アクセラレータ:ハッシュ計算をハードウェアレベルで高速処理。
- OTP(One-Time Programmable)メモリ:チップ内部に8KBの書き換え不能領域を持ち、秘密鍵やデバイス固有の識別IDを物理的に安全保管。
- 耐タンパー・グリッチ検出:電源電圧の瞬間低下(電圧グリッチ)やクロック異常を検知してシステムを安全に停止させる耐攻撃設計。
代名詞「PIO(プログラマブルI/O)」も3ステートマシンに強化
CPUに負荷をかけず独自の通信プロトコル(DVI/HDMI映像出力、特殊LED制御など)をハードウェア生成できる人気の「PIO」も、2ブロック(計8ステートマシン)から3ブロック(計12ステートマシン)へと大幅増設されました。より複雑なタイミング制御がマイコン単体で軽々とこなせます。
まとめ:ホビーから量産組み込みまでを塗り替える真の決定版
Raspberry Pi Pico 2は、単なるマイコンの正常進化にとどまらず、ArmとRISC-Vという2大アーキテクチャの架け橋となるエポックメイキングな存在です。
初代の使いやすさとピン配置を完全に維持しながら、浮動小数点演算、倍増したメモリ、そして鉄壁のセキュリティを手に入れたRP2350。電子工作の入門用ボードとしてはもちろんのこと、商用IoT機器やロボット制御のコアとして、これからの組み込み開発の最前線を牽引していくことは間違いありません。



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